中国進出 成功企業レポート

社員のモチベーション向上を

実現する人事制度

貿易公司:社員のモチベーションを向上する人事制度 菱華電機貿易(上海)有限公司
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貿易公司:社員のモチベーションを向上する人事制度 菱華電機貿易(上海)有限公司

 中国では、地域ごとの「昇給指導ライン」が政府から公表されている。経済発展の状況などに基づき昇給率の目安が定められたもので、2018年は7~9%前後であった。これは決して強制されるものではないが、物価が上がり続ける中で社員からの昇給希望は強く、評価面談の時期には頭を悩ませる駐在員が多いと聞く。

 菱華電機貿易(上海)有限公司は、三菱電機トレーディング株式会社の上海法人として2004年4月に設立。2018年1月から上海法人独自の新人事制度を運用し、社員のモチベーション向上や新規採用時に効果が見られている。

 

 新人事制度導入に至った経緯やその後の運用について、行政業務部高級経理の柴崎氏にお話しを伺った。

曖昧な評価からの脱却

――まず、新人事制度導入の背景についてお聞かせください。

 新人事制度の導入以前、当社は明確な評価基準が無く曖昧な状態が続いていました。いわゆる匙加減で評価をしていたため、評価者である日本人駐在員が入れ替わる度に見方が変わり、社員からは不満の声があがっていました。同じ役職なのに給与が大きく異なる社員もいて、バランスの悪い状況になっていました。

 

 そこで、日本本社の制度をベースにし、新人事制度を構築する事にしました。この際注意を払ったのは、賃金が発揮能力に見合うよう全体のバランスをとりつつ、結果的に全社員が昇給するように設定する事です。

職務成果基準と目標管理制度は両輪

――制度の概要をお教えください。

 まず、職務成果基準を設計しました。全社員を7等級に分け、等級ごとに「職務遂行能力」「メンバーシップ」などの項目で、求められる基準を明文化しています。更に各等級を30のランクに分け、基本給内の等級給与を定めています。

 

 30ランクと細かく設定したのは、昇給額に幅を持たせるためです。基本的に評価の度に昇給をする前提があります。しかし社員によっては、さほど大きな成長が見られない場合もあります。そういった場合でも、ランク分けが細かいので昇給出来るという仕組みです。この等級給与は基本給の約7割で、残り約3割は勤続給という構成です。

 また、賞与は目標管理制度を導入し、その結果を反映するようにしました。各社員が、一年間で取り組む事項を設定し、目標設定シートに記入しています。項目は大きく分けて「コンピテンシーテーマ」と「成果目標テーマ」の二つがあります。

 

 「コンピテンシーテーマ」では、「組織・チームワーク」「業務遂行」「自己の成熟性」などの8群を更に細分化した約70テーマから社員が複数選択し、自分自身の取組みを設定しています。

 「成果目標テーマ」では、「新規獲得」「費用削減」などから同様に選択しています。

徹底した目標の明確化と適切化

――目標管理制度を導入している企業では、「目標設定ができず、他社員が設定した目標をそのままコピーする社員がいる」というケースもあるようです。慣れていない場合、目標設定は難しさを伴いますが、御社ではどのような事に注意を払われましたか。

 当社でも同じケースはありました。最初はコピーした社員もいましたし、何より抽象的な表現が多かったですね。そのため評価者主導で、2回前後見直しをさせました。誰から見ても明確で、かつ低すぎない目標を設定させました。社員によってはどうしても明確化できなかったので、やはり評価者が導きながら設定を行いました。評価者は一次上長と二次上長に分かれていて、一次上長は各課のマネージャー、二次上長は新人事制度導入の中心となった行政管理部のマネージャーと総経理です。

 また、目標を設定させる上で、拠り所となる部門方針が必要でした。そのために、マネージャーが中心となり会社方針に基づく部門方針を定め、これを基に社員との評価面談を行いました。「コンピテンシーテーマ」と「成果目標テーマ」を細分化し提示した事もあり、具体的な面談が出来たと感じています。

新人事制度によって明確になった「目標像」

――新人事制度導入後、どのような効果が見られましたでしょうか。

 まず、多くの社員が大幅に昇給した事もあり、不満の声はあがりませんでした。会社が社員に求めているものが明確になった事で、各社員も自分の目標像がはっきりとし、日常業務のモチベーションにも良い影響を与えているようです。

 

 また、「コンピテンシーテーマ」と「成果目標テーマ」という軸が定まった事もあり、評価面談もスムーズになりました。年末の最終評価面談の他に中間進捗面談も行っているのですが、評価者と社員がコミュニケーションを図れる場があるのは良いですね。

 

 更に、新しく社員を採用する際にも、給与テーブルがはっきりとしているため話がしやすくなりました。ただ、どうしても給与の額面では欧米企業などには太刀打ちできないので、目標管理制度に基づく賞与、それと福利厚生面でアピールしています。

「社員を大切にしている」事を伝える福利厚生

――どのような福利厚生を導入されているのでしょうか。

 社員旅行、食事手当、慶弔見舞金、誕生日のお祝い、永年勤続制度などです。一般的ではありますが、内容は手厚く設けています。社員旅行は昨年日本に行きましたし、比較的良い旅行先を選んでいると思います。食事手当は物価の上昇に合わせて見直しも行っています。

 

 また、各等級の職務成果を明文化した事で、必要な教育訓練項目も明確になりました。その結果、社員からの要望が強かった教育訓練の導入も、適切に進みました。等級が上がる事で参加できる教育訓練が明示されたため、モチベーション向上にも繋がっているようです。

 

 社員を大切にしていることが伝わらないと流出してしまいますし、良い人材も獲得しにくいですからね。

社員の更なるモチベーション向上を目指して

――人事制度や福利厚生に関して、今後予定されている事についてお聞かせください。

 給与テーブルは、今後も小刻みに見直さなければならないと思っています。現制度では、低い等級の昇給幅が大きく、高い等級は小さめにし、つまり上に行けば行くほどカーブが緩やかになるように設定しています。現時点では適切な設定が出来ていると思いますが、今後物価や会社の業績などに応じて、定期的な見直しは必要だと考えています。

 試用期間についても、求める成果や能力を明文化し面談で伝える制度を導入します。正社員登用前にミスマッチを防ぐ事も、重要だと感じています。

 

 また、評価者育成も必要です。目標設定と進捗確認には、適切なコミュニケーションと指導が大切なので、しっかりと制度を運用できる評価者を増やしていきたいと考えています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 インタビューで話に挙がったように、目標管理制度導入には難しさを伴う。制度自体の設計ももちろんだが、社員の目標設定を導く評価者が育っていなければ、制度は絵に描いた餅となる。「目標設定ができず、他社員が設定した目標をそのままコピーする社員がいる」というケースも多く耳にする。しかし、そのような状況において、会社や評価者が一方的に目標を押し付けては、社員のモチベーション向上に繋がらず、社員と評価者双方の納得感も高まらない。

 

 菱華電機貿易(上海)有限公司では、明確な評価制度を設計しただけでなく、社員に深く考えさせ、目標を定量化・明確化させるコミュニケーションがあるからこそ、制度導入が良い形で実現できたのだと認識している。今後、駐在員ではなく、中国人管理者が評価者として育ち、制度が運用されれば、更に良い形が実現されるだろう。

 

 ご参考になれば幸いだ。

取材協力:菱華電機貿易(上海)有限公司

聞き手:上海埃和希企业管理咨询有限公司 梅村 達

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