中国進出 成功企業レポート

仕組みとコミュニケーションで

低離職率を実現

製造:高い従業員満足度の実現 优昵蓓乐(无锡)装饰制品有限公司
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製造:高い従業員満足度の実現 优昵蓓乐(无锡)装饰制品有限公司

 中国では従来から離職率の高さが問題に挙がる。中国最大規模の求人ウェブサイト『前程無憂』を運営する51jobが公表したレポートによると、2017年における全業界の離職率は20.1%だった。日系企業でも同様に高い離職率に頭を悩ませている企業が少なくないが、一方で5%未満に抑える事に成功している企業も存在している。

 江蘇省無錫市に工場を構える优昵蓓乐(无锡)装饰制品有限公司(本社石川県金沢市、ユニベール株式会社)は、遮光や遮熱など機能性の高いカーテンの製造を強みとする企業だ。離職率が3~4%と低い事から市の労働局から表彰を受け、手当(稳岗补贴)が支給されている。離職率の低さが示すように従業員満足度が高く、中には家族の事情で一度退職後、復職する従業員もいるほどだ。

 

 高い従業員満足度を実現しているマネジメントについて、2008年6月から中国に赴任している総経理の遠藤孝氏にお話を伺った。

採用の多くは既存社員からの紹介

――まず、従業員の構成についてお聞かせください。

 当社は2007年11月から無錫工場を稼働し、現在の社員は200名前後となりました。その内約6割が無錫戸籍の人たちです。他の4割の従業員も戸籍自体は無錫以外ですが、単身で出稼ぎに来ている人は少なく、家族全員で無錫に住居を構えている人がほとんどです。

 また、採用の多くは既存社員からの紹介です。派遣会社からの紹介はほとんどありません。

 

 このような事から、ジョブホップを目的とするよりも、安定を望み人間関係を大切にする人たちが集まっているのかと思います。

「半出来高制」によるモチベーションの向上

――社員からの紹介採用が多いことは従業員満足度の高さを表していますね。どのような点で工夫されているのでしょうか?

 まず給与体系です。私の赴任当初は横並びの給料で生産効率も低い状態でした。また技術を持つ社員の流出が続き、更に残った社員も技術を学ぶ意欲が低いなど、悩ましい状況が続いていました。

 

 そこで見直しを重ねながら、現在では「半出来高制」を取り入れています。入社時点での給与は決して高くありませんが、努力により社員のランクが上がれば他社と比較しても遜色ない水準になるように設計しています。

 

 例えば製造現場では、社員の能力によってABCの3ランクに分け、それぞれ基本給と時間当たりの仕上げ目標値を設定しています。基本給部分は保証しつつ、目標値を超えた場合はその数に応じて成果給を支給するという仕組みです。

 このランクは毎月の社員本人の申請により分けています。目標値を達成しなくても、上位ランクは基本給が上がるので高めにランク申請する人もいますが、申請時には社員の能力を把握している班長がチェックと承認を必要とするため、適切なランクに分けられていると思います。ただ、社員の意欲は尊重し、チャレンジはできるだけ受け入れるようにしています。

 

 「半出来高制」の導入により、意欲の向上以外にも良い成果が表れるようになりました。まず、不良率が下がりました。検査時に不良があった場合は手戻りが発生するので目標値も達成しにくくなります。そのため一つ一つの作業を確実に行う意識が醸成されました。また、長時間のトイレ休憩や無駄話が減り、生産効率が向上するという成果も見られるようになりました。

管理者層の評価基準

――管理者層にはどのような目標値を設定されているのでしょうか?

 不良率と最終工程仕上がりの数が目標値です。カーテンの製造は一枚の布をチームで繋ぎながら仕上げるリレーのようなものです。そのため全体の作業をチェックし工程が流れるように人員を配置しているかどうかを現場管理者の評価基準としています。

 

 具体的には、多能工の配置が重要になります。毎日昼食後には班長や主管が集まり「工程は問題無く流れているか」、「人を回してもらえないか」など、当日の状況を共有しています。顔を合わせての直のコミュニケーションが大切ですね。この毎日の打合せが、「良いものを作ろう」という意識とチームワークを高めていると思います。

 

 多能工は全工程においてBランク以上である事が条件です。また不良率の目標値を定めています。もちろん給与条件が良いので、多能工を目指して縫製の様々な工程を勉強しようとする意欲向上にも繋がっています。

 間接部門も同様に目標を設定しています。毎年業務上の個人目標を本人が決め、最終的には上長と話し合いながら設定する流れです。決まった目標は会社内に掲示し、誰からも見えるようにしています。

大好評だった「ユニベール祭り」

――給与面以外で、従業員満足度を高める施策を教えてください。

 今年5月には「ユニベール祭り」を開催しました。

 

 日本の夏祭りのイメージです。敷地内にたこ焼き、焼きそば、チョコバナナ、射的や魚釣りなどの屋台を準備し、社員の家族を招きました。手帳を配布し様々なものをスタンプラリー感覚で楽しんでもらうよう工夫をすることで特定の屋台に人気が集中することを防ぎました。スタンプラリーで多くの屋台を楽しんでもらうアイディアは、中国人社員からのものです。

 

 実は、昨年までは多くの日系企業と同様に社員旅行を行ってきたのですが、参加する社員は喜んでくれていながらも家族を連れていけない寂しさも感じていた様子でした。また、工場の高稼働時は残業も多いため、ご家族の理解と協力が不可欠です。そのご家族にも感謝を伝えたいとずっと思っていました。

 また以前一度、社内カレーパーティーを実施したのですが、その時社員数の倍の400人分作ったものが完食された上、「子供の分も欲しい」との声があがりました。この時にも、社員だけでなく家族を含めて大切にする事の重要さを認識しました。

 

 そのような経緯から、今年は社員旅行の代わりに「ユニベール祭り」を開催しました。準備は3ヶ月くらいかかりましたが、参加した社員の家族からは「来年も是非やってください!」と言ってもらい、とても嬉しかった事を覚えています。

 

 また、祭りの準備と開催を業者に全て任せるわけではなく、社員自身が中心になり進めた事が良かったと思います。社員自身が自ら考えて取り組むことはモチベーションの向上に繋がりますからね。

社員を主役にする

――社員旅行を止めるというのは潮流に逆行していますが、「家族を大切にする」という視点は非常に重要で、他企業様にとっても参考になります。他にはどのような事をやられていますか?

 誕生会ですね。毎月1回、その月に誕生日を迎えた社員を主役にして開催しています。この際、以前はプレゼントだけを渡していましたが、少々無機質に思ったので、紅包と私からのメッセージカードを渡すように変えました。また、特に新人は私と同じテーブルに座らせるようにし、コミュニケーションを心がけています。

 

 他には、火曜日から金曜日の朝礼で、毎日誰かが発表する機会を設けています。発表するテーマは定期的に変えています。「人生の中で忘れられない事」、「好きな言葉」、「5年後の自分」などです。

 

 私は、モチベーションとは、「自分で試行錯誤してその成果を注目され認められる事で生まれるもの」だと考えています。この朝礼での発表が、モチベーションに繋がり、仕事や人生における意欲や自信の向上にも繋がっていると思います。また、発表を見ていると向き不向きも見えてきますね。ちゃんと考えて話す人もいれば、その場しのぎで話す人もいます。人間にはそれぞれ適性があると考えていますので、得意分野を見極めてそこで勝負させるのが管理者の仕事だと認識しています。

政府との繋がりがもたらす好影響

――離職率が低く労働局から表彰を受けているとの事ですが、政府との繋がりについて他にもお聞かせください。

 当社は現在工場拡大の準備を進めているのですが、政府には土地取得に協力してもらえました。また大規模なパーティーでも大企業の中に交じって参加させてもらえました。政府と良好な関係を築く事は事業自体への好影響にもなりますし、社員の自尊心も満たされるという大きな成果がもたらされます。

 

 他には、無錫市ではなく外注工場がある太倉市での事なのですが、小学校にカーテンを寄贈し、感謝のタペストリーを頂きました。社会への貢献は企業として大切ですし、そのような会社で勤めている事は従業員満足の向上にも繋がりますので、今後も行っていきたいと思います。

総経理という肩書を取り払った時の一人の人間として

――最後に、細かい点での社員とのコミュニケーションについてもお聞かせください。

 私は父親、総務が母親、その下に管理者である兄や弟がいて、その下に現場社員である弟や妹がいると考えています。私は厳しく接していますよ。朝礼などでは厳しい話をしています。その上で、部長などの管理者は味方であるという意識を部下に持たせています。

 

 ただ厳しく接するにしても、失敗に対しても頭ごなしで感情的には怒らず、「どうして問題が発生したのか」、「どのように再発を防ぐのか」を対話しながら考えさせるようにしています。ただし、追い込んでも逃げ道は作ってあげるよう心掛けています。

 

 正直言うと現場を見て口を出したいですよ。ただ、それだといつまで経っても人は育ちません。育てた人が自分の分身になる。私が将来帰任しても、イズムは社風として引き継いでもらうように現地化を目指して育成しています。

 私は総経理という立場ですが、肩書に胡坐をかいて横柄になってはいけません。肩書が無くなったとしても「遠藤」という人間として胸を張れるかどうかを考えて、行動すべきだと強く思っています。以前日本排斥運動が起こった時に、社員は心から心配し配慮してくれました。私を家族の一員として見てくれて嬉しかった事が今でも心に残っています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 一般的に、ここ数年、中国人の日系企業への入社希望理由は「額面の給与」よりも、「安定性」や「福利厚生」などの、「社員を大切にしている事」が重きを占めていると感じる。しかしその一方、社員が安定を求めるばかりで業務に対するモチベーションが低い事で悩んでいる日系企業も多い。

 

 优昵蓓乐(无锡)装饰制品有限公司はモチベーション向上に繋がる給与体系の整備や各種イベントの開催だけでなく、その基盤となる日常のコミュニケーションを重視している事を強く感じた。その結果、効果的なリファラル採用(社員紹介採用)が定着しているのだろう

 

 リファラル採用は人材マッチング率の高さから定着率の向上に繋がりやすいが、リクルートする側の社員が自社の魅力を深く理解している事が必須だ。この点からも、従業員満足度の高さがうかがい知れる。

 

 ご参考になれば幸いだ。

取材協力:优昵蓓乐(无锡)装饰制品有限公司

聞き手:上海埃和希企业管理咨询有限公司 梅村 達

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