中国進出 成功企業レポート

ナショナルスタッフの

自発性を高める

保険ブローカー:ナショナルスタッフの自発性を高める 上海共立保険経紀有限公司
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保険ブローカー:ナショナルスタッフの自発性を高める 上海共立保険経紀有限公司

 「チャイナリスク」という言葉が聞かれるようになって久しい。中国に関わらず、海外事業を行う上では様々なリスクに備えるべきではあるが、どのようなリスクが存在するか、また最新の法律にはどのような注意点があるか、などの情報を、日本語でタイムリーに得る機会は多くない。

 上海共立保険経紀有限公司は、共立株式会社の上海法人として2007年4月に設立。日系独資唯一の保険ブローカー(2024年3月現在)として、保険設計・提案や選定から、保険金請求サポート、リスクコンサルティングに至るまで、様々な業務を中国全土で展開している。主な顧客は日系企業で、顧客数は約560社(2024年3月現在)。

 多岐にわたる情報をどのように顧客に届けているか、そしてその情報を適切に届けるにあたり、ナショナルスタッフがカタログ営業ではなくソリューション営業ができるようになるため、どのようなことに取り組んでいるか、董事長総経理の河野氏にお話しを伺った。

(聞き手は上海埃和希企业管理咨询有限公司の梅村)

仲介業ではなくコンサルタント

――まず、事業内容についてお聞かせください。

 弊社は保険ブローカーなので、保険代理店とは異なり保険会社からは独立した立場です。契約者からの委託を受け、適切な保険を選定・提案し、契約手続きを行います。保険金請求時にも、契約者側の立場で保険会社との交渉を行っています。また、一般的に保険は1社でまとめることが多いかと思うのですが、そうすると他の保険会社の情報が入ってきません。弊社はすべての保険会社と付き合いがあるので、幅広い情報提供が可能です。

 お客さまは大半が日系企業なので日系保険会社を紹介するケースが多いのですが、中国系を紹介することもあります。お客さまの意向を確認しながら適切な保険を選ぶ必要があるので、仲介業ではなくコンサルタントという立場でお客様に接するよう、心がけています。

 保険の種類としては財産保険や貨物保険が多いです。また、最近はサイバーリスク保険がトレンドです。サイバー攻撃により被った対応費用、復旧費用、ECの売上などが補償されます。他には、2021年に施行された民法典で、セクハラに関する企業の責任が明文化されたことで、董事及高級管理人員責任保険(D&O保険)が注目されています。セクハラを訴えられた際、社内にホットラインが無い、対応を放置したなどの理由で、会社に対して賠償命令が下された場合に補償される特約をつけることができます。民法典の施行から2~3年経つので事例が出始めています。

 また、近頃では弊社の役割が進化していると考えています。保険は何かが起きた時のための備えですが、何も起きないことが一番なので、事故などを防ぐためのリスクサーベイやコンサルティングも提供しています。

 更には、私が赴任してからは保険以外の情報も幅広く発信しようと、主に日系企業向けにメルマガの配信やWebセミナーの開催にも取り組んでいます。

お客さまとの接点を増やす

――保険以外の情報も発信されている背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

 私は2020年からの赴任で、コロナ期の駐在スタートでした。コロナ禍の影響で業績が厳しくなり、また出張ができないことで上海市以外のお客さまとの接点が薄くなった、という苦境でした。そこでお客さまとの繋がりを強化するため、メルマガとWebセミナーをスタートしました。

 中国の法改正などの最新情報を、日本人駐在員の皆さまが日本語でタイムリーに入手することは容易ではありません。そのため、特に日系企業に必要だと思われる情報を積極的に発信することが必要だと考えたのです。

メルマガは保険に関わる内容も多いのですが、それ以外に「日系企業にも影響が及ぶが、日本語ではあまり出回っていない最新情報」も意識して盛り込むようにしています。最近では会社法改正に関わるものも配信しました。弊社が整理した情報以外にも、保険会社などから有益な情報が発信されていれば、その紹介もします。

 Webセミナーは上海埃和希企业管理咨询有限公司の協力も得て、ここ3年でナショナルスタッフの育成、コンプライアンス、メンタルヘルスと様々なテーマで開催しました。メルマガ・Webともに、お客さま以外にも無料でご案内しているので、ご興味がおありでしたら是非お問い合わせください。

 

 また、今後はお客さま同士の交流会を開き、ビジネスマッチングも行っていきたいですね。特に赴任後間もない駐在員の方は、自分一人や自社だけで抱え込んでしまい視野が狭くなりがちです。メルマガやWebセミナーと同様に、弊社の売上的には直接寄与するものではありませんが、「お客さまが何か困った時に、一番に弊社が頭に浮かぶような存在になりたい」という考えで弊社のビジネスを再定義しました。交流会が視野を広げる助けになれば嬉しいという思いで企画中です。

ナショナルスタッフの自発性を高める

――お客さまに御社の価値を感じてもらうためには、幅広い知識はもちろんのこと、ヒアリングや提案などのコミュニケーション能力が必要になります。従業員の皆さんは高いレベルが求められるのかと思います。どのように育成しているのでしょうか?

 

 その話をする上で梅村さんにお聞きしたいのですが、保険に対して、ネガティブなものとしてはどのような印象を持っていますか?

 

――保険でカバーされる範囲が分かりにくかったり、そのために誤解が生じて保険金が支払われないケースがあったり、などでしょうか。

 そうですね。保険の約款は難解で、慣れていないと分かりにくいものです。そのあたりをかみ砕いて契約者に説明するのが我々の役割です。おっしゃる通り特に営業担当は、お客さんの心配事やニーズをしっかりとヒアリングする能力が必要で、更には簡潔に説明したり分かりやすい資料に落とし込んだりする能力も求められます。

 ナショナルスタッフのそういった能力を鍛えるのが日本人駐在員の役割の一つですが、私が赴任した4年前は「自分の赴任中だけ業績が良ければ問題ない」と考える駐在員が多いように感じました。自分が成果を挙げることに目が向きすぎていて、ナショナルスタッフにスキルを移転せず、教える前に自分が動いてしまっていました。教育することが頭になく、帰任までに置き土産をしようという発想が乏しい状況でした。その結果ナショナルスタッフがロボットのように受け身で、自分の頭を使わなくなってしまっていました。

 しかしながら各企業の現地化が進む中で、ナショナルスタッフの重要性は増しています。銀行の支店長も中国人が増えるなど、重要なポストに就くケースもあります。そうなると日本人駐在員ではなくナショナルスタッフ同士がやり取りをした方がスムーズです。

 そのため弊社も教育に力を入れてきました。会社の仕組みとして教育を行っていきたいので、OJTだけでなく、上海埃和希企业管理咨询有限公司に依頼して定期的に研修を実施しています。一昨年は問題解決力向上の研修、昨年はプレゼンテーション資料作成と説明力向上の研修を実施しました。特に資料作成のレベルはだいぶ変わりましたね。以前は文字の羅列で読みにくかったのですが、図解するスキルが向上しました。

引継ぎが分断とならぬよう

――最後に、日系企業や日本人駐在員にアドバイスをお願いします。

 先ほども話したように、駐在員はナショナルスタッフ育成の意識を持つこと、そして会社は仕組みとして教育を行うことが大切だと思います。

 コロナ禍明け、市場が思うように回復せず苦しんでいる企業は多いと感じています。業績は伸びている状況では、駐在員は自分の成果を追い求めればよかったのかもしれません。しかし踊り場を迎えたり、もしくは試練に直面したりしている状況では、日本人駐在員だけの力では解決に向かいません。中国のことを良く知り、お客さまとも中国人同士でやり取りができるナショナルスタッフの力が必要です。

 しかしながら、ほとんどの駐在員は任期が3年前後なので、中国ビジネスに慣れるころには帰任のタイミングを迎えてしまいます。その結果、引継ぎが分断になってしまっているケースは多いのではないでしょうか。駐在員交代後もナショナルスタッフが会社を引っ張っていけるよう、会社として一貫性をもって育成する必要性を、我々駐在員は意識するべきです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

 弊社にWebセミナー共催をお声がけいただいた時、「保険以外のテーマで本当に良いのか?上海共立保険経紀有限公司にメリットはあるのか?」と疑問に感じた。それが今回のインタビューで解消され、腹落ちした思いだ。コロナ禍以降、業績が思わしくない企業は少なくないと聞く。「顧客に対して何を提供する企業なのか」「自社にはどのような使命があるのか」という観点で、ビジネスを再定義する重要性は増しているのであろう。

 また、クライアントに対して幅広い情報を適切に伝えるためには、駐在員だけが奮闘するのではなく、ナショナルスタッフの育成が必要という点も、心から同意する。

 河野氏がおっしゃる通り、駐在員が「ナショナルスタッフにスキルを移転せず、教える前に自分が動いてしまう」「その結果ナショナルスタッフがロボットのように受け身で、自分の頭を使わなくなってしまっている」という状況に陥っている日系企業は少なくないように感じる。駐在員の皆さまは是非「帰任時にどのような組織になっていることを望むか」「帰任時にナショナルスタッフからどのような言葉をかけられたいか」と自らに問いかけ、将来に思いを馳せる機会を作っていただければと思う。

 厳しい環境下においても対応できる組織づくりのため、河野氏の考えや取り組みが参考になれば幸いだ。

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